学習サロン ブリリアンス

超難化した高校生クイズの意図

ひさびさに高校生クイズを観た。

まずびっくりしたのは、

問題のレベルが大幅に上がっていること。

かつては、一般視聴者も答えられるような

問題があったものだが、

ほとんどが大学以上の専門知識に特化した

ハイレベルの教養問題であった。

昔は、アニメや漫画・音楽・映画などの

学問以外の分野からの出題もあったはずだが、

そんなある種「軟派」なものは一切排除。

答えを聞かされたところで、

まったく聞いたことありましぇん。

というような「硬派」な質問ばかりである。

決勝戦は、東大生の正解率が1%以下の

問題で構成されており、私が答えられたのは

たったの一問であった。。。

しかしまあ、参加している高校生の皆さんの

解答速度の速さと、博覧強記ぶりに度肝を抜かれた。

参加高校生のレベルも極めて上がっている。

観覧席には、クイズ番組でおなじみの

京大卒芸人宇治原さんや、茂木さんもいたが、

高校生達の頭脳のすさまじさに

言葉を失っているようだった。

いつも「知的」を売りにしている二人が

とても小さく見えてしまう。

これも製作者の意図なのであろう。

かつては、「青春感」「シズル感」「お祭り感」

を前面に出し、視聴者が温かく見守れる番組であった

高校生クイズが、ここまで大きなモデルチェンジを

したのは何故であろうか。

ひとつは、昨今のクイズ番組ブームで、

質の追究をしない、安いクイズ番組が氾濫したことの

反動があるのだろう。

多くの番組で、芸人やバラエティアイドルが

知性の高さではなく、低さをアピールすることで

番組の盛り上げがなされていた。

人は、自分より圧倒的な知性を持つ人には

憧れもするが、畏怖も覚える。ため息が出るのである。

わが身の限界を直視せざるを得ないのだ。

逆に、自分の方が勝っていると思えるような人間を見ると

安心感を覚えることもある。

芸人さんたちは、自分ができないことを卑下せず、

むしろ売りにして、あははと笑っているので、

視聴者も罪悪感を覚えないで、気軽に安心を確保できるのだ。

そこに緊張感はない。緊張感があっては、

一日の疲れを抜くための「バラエティ番組」としては

支持を得られないであろう。

人の(さもしい)心理をうまく捉えた手法である。

クイズ番組はロケも少なく、若手芸人を起用すれば

番組制作費を極力安く抑えられるので、

この手のクイズ「バラエティ」は業界を繁茂した。

当然、繁茂すれば淘汰されるのが自然の摂理である。

同じような、緊張感のないバラエティをやっていては

視聴者にもあきられる。まして30年も続けている

高校生クイズは、マンネリからの脱却も求められる。

真剣勝負と言えるようなクイズ番組は減った今、

視聴者を圧倒し、ため息をつかせるような

知のバトル番組にシフトしてはどうか。

それが、高校生クイズの製作者サイドの意図する

ところであったのではないだろうか。

これは大変な賭けであったと思う。

かつての、ほのぼのとした高校生クイズを愛した

視聴者を失うかもしれない。

ハイレベルすぎて、視聴者はついていけないかもしれない。

ましてや、昨今のお気軽クイズバラエティに

慣れた視聴者は。

実際、視聴率や評判というのはどうなのだろうか。

私は観た後で、どっと疲れがきた。

M-1や、ワールドカップを観戦した後と同種の疲れだ。

しかし、私はある種の感動も覚えた。

M-1や、ワールドカップを観戦した時と同種の感動を。

いい試合だったなあ・・・と思えたのである。

それは、ハイレベルな能力のぶつかり合いに対する感動

というよりは、それを支えているであろう尋常ではない

執念に対する感動である。

たしかに、決勝まで残った高校生達の頭能は並ではない

だろうが、あそこまで幅広い知識を縦横無尽に脳みそに

溜め込むには、相当の努力と執念があったに違いない。

戦いの裏側にある物語が肌身に迫ってくるほどの

真剣勝負を観られる機会はそうない。

競技者たちも1年に1度(オリンピックやW杯なら

4年に1度)のチャンスであるからこそ、

先のことなど考えずに、全てをその瞬間に投じてくる。

(長く戦うペナントレースで

そんなことをやっていたら死んでしまう)

一瞬にかける執念も努力の蓄積も半端ではない。

だからこそ、素晴らしい試合が生まれる可能性も高い。

テレビ視聴者も、「お気楽」だけでなく、

時には、「がつーん」とやられ「は~」とため息を

つくのも、精神の滋養になるのだ。

1年に1度であるからこそ、

圧倒的な超ハイレベルの真剣勝負を。

番組演出上の改善点はあると思うが、

製作者の判断は意義あるモノであったと思う。

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