文藝春秋の今月号(12月号)は私にとって、とても感慨深い一冊でした。
私の大学の先輩が、気鋭の若手論客として、安倍首相に向けた提言を寄稿されていたんです。
タイトルは「子育て支援こそ成長戦略」。
その方は、現在同志社大の准教授。今年の二月には、同大の地方入試でたまたま鹿児島に来られていて、六年ぶりの再会を果たし、桜島を中心に鹿児島を案内させて頂きました。
その時に、ご自分の研究内容を熱く語って下さったのが、とても刺激的で面白かったのを覚えています。
その後、その方の論文の内容は、今回の文藝春秋を始め、様々な媒体に取り上げられ、政治家の方を始め、多くの方に少なからぬ影響を与えています。
知恵と努力を尽くした研究の成果が、実際に、この社会に影響を及ぼして行く。
そしてその影響の波が、自分の「良いと信じる方向」へ、この社会の形を少しずつシフトさせていく。
すごいことです。
冷静で緻密な分析と、未来への温かな希望が込められた「子育て支援こそ成長戦略」というその方の論文は、その方の創る音楽と相通ずるものがありました。
実はその方は音楽家でもあり、私はかつて自分が制作した映画のために、その方にたくさんのオリジナル曲を作曲してもらっていました。
監督であった私のイメージをその方に伝えながら、車でロケ地を巡っていた時のこと。
五線紙を常に持ち歩いていたその方が不意に、「西野君、ちょっと車を停めて!メロディが降りて来た!」と言って、ものすごいスピードで楽譜を書き出したのです。
その姿は、音楽のことを良く知らない私には、本当に格好良く、眩しく見えました。
その後、そのメロディを元にして、創り上げて下さったメインテーマ曲のデモテープを初めて聞いた時の感動を今でも忘れません。
私の伝えたイメージをしっかり汲み取った上で、私が思ってもみなかったような、作品に対する鋭く深い解釈を盛り込んだ曲に仕上げて下さったのです。
共感をベースとしながら、そこに思ってもみなかったような新しい何かが生まれる。
コラボレートとはこういうことかと、教えてもらった気がします。
あれから10年。
その方は大学の教授/研究者として、私は私塾の指導者として、いわゆる芸術的な創作活動からは少し離れてしまいましたが、根本にあるものは実はあまり変わっていないのかもと、この文書を書いていて思いました。
その方の論文は、やはり、その方の音楽と同じで、緻密な分析と、鋭く深い解釈、そして未来への希望を、真摯な語り口で語っておられました。
そして、それはまた、10年以上に及ぶ、その方の学びと努力の賜物。
私も、教育に携わって10年になりますが、その方のように、いつか、自分の歩んで来た道が育んでくれた賜物を世に出すことができればと、強く思う次第でした。
【余談】
実は、先日、芥川賞を受賞された方も、私の京都時代の知人で、その方も文藝春秋に載っておられました。(その方、当時の映画仲間の奥さんなんです。受賞の一報を知った時には大変感動しました)
同世代の方達が今、次々と世に出て、大きな仕事を成していることが感慨深く、大きな刺激となりました。何かをやり続けることのすごみを思い知らされます。