日常の中で法則を想像する

今日の授業でも嬉しいことがありました。

ある生徒が自分からこんなことを言ってくれたんです。

「前回の授業で相対速度と反発係数をやりましたよね。

僕は教室から帰る時に、自分の前を走っていた自転車を見て、相対速度について考えてみたんです。

前の自転車が5m/sで走っていたとして、僕の自転車が10m/sで走っていたら、相対速度は5m/sで、だんだん近づいていくな~って。

それでもしぶつかったら、僕の自転車は、そのまま前方に進んでいくのか、それとも後方に弾き飛ばされるんだろうかって。」

この発言が僕は本当に嬉しかったのですが、それには理由があります。

僕は常々その生徒に、物理で学んだことを、日常でも想像してみたらいいよと伝えていました。

例えば、部活でキャッチボールをする時には、ボールの速度の水平成分は変わらないけど、鉛直成分は変化して、最高点では0になることを想像しながら投げてみよう、ということを伝えていました。

そしてその生徒が、僕の言った通りにキャッチボールで物理法則を想像したのではなくて、自発的に自転車に乗っている時に物理法則を想像してくれたことが、とても嬉しかったんです。

今日の授業が始まる直前までは、今まで僕が伝えてきたことがちゃんと彼に届いているのかな、と不安になったりもしていたのですが、

彼が、僕の伝えたかったメッセージの表層ではなく、その根幹をちゃんと受け止めていてくれていたことが分かって、僕自身が大きな喜びと安堵、そして希望を得たのです。

物理というのは決して机の上だけの学問ではなくて、日常のあらゆる場面に立ち現れる、とても身近な学問であることを、そういう「想像」を通じて実感していけるのではないかなと思います。

彼が自転車に乗りながら自発的に行った小さな「思考実験」は、彼と僕の学びの旅における、とても大きな一歩になったのではないかと思います。