さかなやさんが
さかなをうっているのを
さかなはしらない
にんげんがみんな
さかなをたべているのを
さかなはしらない
うみのさかなも
かわのさかなも
みんなしらない
「さかな」まどみちお
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童謡「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」で有名な、まどみちおさん(104歳で大往生されました)の詩です。
一昨日、深夜ラジオを聞いていましたら、吉永小百合さんがこの「さかな」を初め、まどさんの詩を色々と朗読されていました。
私は初めて、まどみちおさんの詩の鋭さに触れた思いがしました。
この「さかな」という詩は、ちょっとこわい詩です。さかなは、人間がさかなを食べているのを知らずに、毎日海の中をただひたすら泳いでいます。自分より大きいさかなに食べられるかもしれない、ということは本能的に知っているかもしれませんが、海の外にいる、自分達の知性を大きく超えた生物に、仲間も含めて大量に捕獲され、加工され、販売され、食されているということを、おそらくは知らないでしょう。知っていたとしたら、その精神的ストレスは大変なものでしょうね。
これは実は人間にも当てはまることなのかも知れません。人間は、自分達の住む世界の外側にいる、自分達の知性を大きく超えた何かに、実は「何かをされている」のですが、それに気づくことができないでいる。もし気づいてしまったら、こわくて不安で、今までのようには生きて行けないかもしれない。そういうSF的な恐ろしい連想をさせてしまう力が、このまどさんの詩にはあります。すべてひらがなで書かれているところが余計に怖いですね。(朗読された吉永小百合さんは、何とも切ない詩ですね…とおっしゃっていました)
この詩を読んで、他の感想をお持ちになった方がいらっしゃいましたら、是非コメントをお寄せ下さい。