深夜帰宅して、録画してあったTHE MANZAIを再生して、タカトシはやっぱり漫才うまいなあなんて言いながら、餃子をつまんでいたんです。
完全に気を抜いていました。
スマホゲームCMの連打の後、不意に流れた、一片の映像に、私は心の全部を持って行かれました。
受験生の友、大塚製薬カロリーメイトのCMです。
もう後半は涙がポロポロ流れていました。
巻き戻して何回も観て、気がつくとTHE MANZAI流すの止めて、スマホで探した、このCMの長いバージョンに見入ってました。
何が素晴らしいんでしょう、このCM。
…ちょっと語らせて頂いても宜しいでしょうか。
仕事柄、高校の美術部の皆さんの絵をよく見に行くんです。皆さんそれぞれ描く題材は違うんですけど、そこには何か共通する「高校生特有の絵のタッチ」みたいなものがあるような気がしていたんです。
例えば、高校美術部の皆さんは、友人をモデルに描くことが比較的多いように思うのですが、その描かれる顔や全身像が、多分実物よりちょっと「不細工」になるんですよね。顔が少しだけ歪んでいたり、骨格に違和感があったりするんです。
それは、描く当人のデッサンの技量がまだ未熟だということもあるのかもしれませんが、それだけが原因ではない気がします。むしろ彼らは的確に、友人の顔や姿に透けて見える「歪み」「不安」「苦悩」をキャッチして、繊細に描き出しているんだろうと思うのです。
青春は美しく歪んでいる。
その歪みの中にこそ、未来への希望は息づいている。
このCMは、現役の美大生の方達が、黒板に描いては消し、描いては消しを繰り返してできた計6328枚の絵で構成されているそうですが、そのひとつひとつに、青春の歪みがにじみ出ています。これが、高校を卒業したばかりの美大生ではなく、もう少し上の世代の画家さん達の手によるもので作られたとしたら(例えばスタジオ・ジブリの手によるものだったら)このような味わいは出なかったでしょう。
描かれているストーリー自体は、オーソドックスな高校生の日常であり、記号的なものです。これを実写だけで作ったとしても、ありふれた、つまらないものになっていたでしょう。まだ生温かい青春の歪みを身に宿す美大生たちが、一枚一枚懸命に描いた絵で構成されているからこそ、そのストーリーには肉感が生まれ、血が通ったのだと思います。
全編に流れる岡村孝子さんの「夢をあきらめないで」のカバーもまた素晴らしい。これを歌っているのも、18歳の女性シンガーの方だそうで、絵だけでなく曲にも、美しい青春の歪みが密かに隠れているかもしれません。
そして、最後の決めコピー。
「見せてやれ、底力」
何かに立ち向かう人を底で支えているのは、努力の積み重ねという美しい結晶だけではないと私は思います。それまでに歩んで来た道のりの中で味わった、多くの苦悩や不安が織りなす濁った結晶も、実は大きな役目を負ってその人を支えている。
そういった負の結晶も全てひっくるめて、自分の底の底にある力を全部出してやれ、見せてやれという力強い励ましと赦しがこの言葉からは感じられます。そして、自分の底の底にある力をあなどってはいけない。
魂のこもった優れた映像作品だと思います。
CM自体が、心のカロリーメイトになってますよ。
センター試験まであと26日、底力、見せてやろうじゃありませんか。