前回の記事で、数学が得意になるには、常に「目的意識」をもって問題を解く練習をすると良いということをお話ししました。
今回は、特に図形問題が苦手な生徒さんに向けて、どのような目的意識を持てば問題が解けるようになるのか、その思考法を具体的にお伝えしようと思います。
パッと見て解法が分からない図形問題に出くわしたら、次のことを意識し、実行してください。
まず、問題文をよく読んで、図を描きます。
分かることを書き込んでいって、題意を把握します。
次に問題文が「何を求めよ」と言っているのかを、しっかりと意識します。
そして、その最終的に求めたいもの(=Aとする)が分かるには、何(=Bとする)が分かればいいかを考えます。
さらに、そのBが分かるためには、何(=Cとする)が分かればいいかを考えます。
これを繰り返しながら、Aまで至る道筋が見えたら、問題はほぼ解けたことになります。
以上を私は「逆算思考法」と呼んで、図形問題に苦手意識のある生徒によくレクチャーしています。
生徒の中には、この逆算思考法を意識し、ねばって考えたことで、受験本番で難しい問題が解けましたと報告してくれた人もいました。
この「逆算思考法」が身についてくると、図形問題に限らず、多くの応用的な数学の問題でも、その解法が見えやすくなってくると思います。
実はかつて私自身にも、最終的なゴールを意識せず、やみくもに問題にパターンを当てはめようようとしていた時期がありました。
それでは時間を浪費するばかりで、応用的な問題はなかなか解けませんでした。
その後、目的意識をもって問題を解くことがいかに大事かを予備校の先生に教えてもらってからは、問題の見え方が随分変わってきました。
そして、応用的な問題も徐々に解けるようになってきたのです。
後年、私が塾の仕事に携わるようになり、たくさんの生徒を見てきて感じたことがあります。
それは当時の私と同じように、問題が何を求めよと言っているのか、その「最終的なゴール」を見失ったまま、問題と格闘している人が少なくなかったことです。
解法を覚え、反射的に解ける問題ばかりを練習し、それが数学だと思ってきた人は、このような事態に陥ってしまうのかもしれません。
しかし本当は、「〇〇を求めるためには、□□を求めればよさそうだ。□□を求めるためには、△△の定理を使って、☆☆を求めればいいんじゃないかな。」という風に、
最終的なゴールから逆算し、今まで学んだ知識・経験を生かしながら小さなゴールを設定して筋道を作っていくことこそ、数学の問題を解くという行為なのです。
公立高校受験ではパターン問題を完璧にすれば上位校に合格できます。
また公立の上位進学校では、3年間に5冊の教科書を終え受験演習もしなければならないので、パターン問題を反射的に解く練習に重きが置かれます。
それゆえ、真面目に学校のカリキュラムに従って勉強してきた人ほど、数学を誤解し、
「問題を見ただけで、ほぼ反射的に解けなければならない」という思い込みが生じるのかもしれません。
かつての私がそうであったように。
もちろん、基礎・基本を反復練習し、典型的な問題なら反射的に解けるレベルにしておくことはとても大切です。
基本的な知識や、計算力がある程度なければ、応用問題を解く過程で行き詰まりが出てくるでしょう。
ですが、知識を身に着け、計算力を鍛えることだけでは応用力はつきません。
「最終的なゴールから逆算して、解答の筋道を作っていく練習」を積んでいくことで、難しく感じる問題も解けるようになってくるのです。